映画業界で最も注目されている監督の一人・タイカ・ワイティティ。
『マイティ・ソー バトルロイヤル』『ジョジョ・ラビット』では監督として、『フリーガイ』などでは俳優として、今もっと勢いのある映画監督・俳優・コメディアンでニュージーランド出身の46歳です。
実写版『AKIRA』や『チャーリーとチョコレート工場』を基にしたアニメ2本の監督・脚本・製作総指揮をつとめるなど、大物監督と言っても過言ではありません、
今回は彼の有名な大作ではなく、タイカ・ワイティティの名が売れる前に彼が手がけた作品を紹介。
彼のユニークな作品の数々の源流。どこかゆるく、クセが強く、ダークユーモアが溢れ、イナタいのにセンスを感じらずにはいられないB級なタイカ初期作品の魅力を!
クセ強め! 遅効性センチな映画『イーグルvsシャーク』
12月1日より、やっとU-NEXTで解禁となった日本未上映で、風変わりなロマンチックコメディ映画『イーグルvsシャーク』。タイカの初長編映画でもあります。
ただ、2泊3日で1100円という高さ。迷った挙句、我こそはタイカのファンだと公言するために鑑賞しました(2022年現在は399円)。
いやぁーマジかっ!が第一印象。弱気で周囲と馴染めない哀愁のある主人公のリリーと、彼女が恋しているキャラが濃過ぎるナード・ギーク系のジャロッドの恋愛物語なのですが、とにかくアクが強い。
ちなみにタイカはジャロッドの兄役で少しだけ出演しています。またリリー役のローレン・ホースリーは、当時のタイカのパートナーだったとのこと。
鑑賞中は、ええっという戸惑い、マジ!?という驚き、クソwwwというドン引き、どちらかというネガティブな反応多めです。一方で、その毒をダークユーモアな笑いに昇華しているタイカの脚本の妙があり、孤独を抱える二人に惹かれていきます。
どことなく、ウェスアンダーソン監督の作品に近いセンチメンタルさや雰囲気を感じました。登場人物が絶妙にお洒落なところも似ているかも。
ただ、遅効性ですね。見終わってから、ゆっくりと浸れる良さって感じです。今も思い出してニヤニヤしています。変哲もない普通の1日の〆には良かった。
一言感想「自分にとっての普通は誰かにとっての異常。」
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グロくて緩い笑いが炸裂『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』
中世から生きているバンパイアたちのシェアハウスをドキュメンタリー風に描いたコメディ映画『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』。笑いあり、グロあり、ゆるめ強めの割と初期の作品。この作品で、世界の映画ファンにもタイカ・ワイティティという名が届くようになりました。
日光に弱く、長生き、血が食料のバンパイアの日常をアイコニックにギャグとパロディ全開で描かれています。タイカ自身も、メインキャラクターの吸血鬼として出演。
クセが強すぎるバンパイアたちが、現代で仲良く暮らしている姿は微笑ましく、彼らリアルな生活に引き込まれます。随所で血と肉が飛び散るので、苦手な方は注意を。
しかしそんな生活も、新米バンパイアの登場で安定した生活に異変が起きます。その辺りからギアが一つ上がり、タイカのコメディワールドが炸裂します。
ちなみに、本作のベースとなった短編映画版『What We Do in the Shadows: Interviews with Some Vampires』(原題)と、Disney+で独占配信中でシーズン3まで展開しているスピンオフ的ドラマ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』も存在。タイカはシーズン1の第1話と最終話を手がけています。
また映画『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』の続編となる『We’re Wolves』の脚本制作も進めているとのことです。
少年の背伸びを描いた『ボーイ』
タイカによる長編映画監督2作目となる『ボーイ』。
舞台は1984年のシンガポール。田舎に住むマイケルジャクソンが大好きな少年は、祖母と従兄弟たちと日々を過ごしていた。7年間会っていない父は、ダンスが上手く冒険家で最高なヒーローだと空想をする毎日。そんなある日、父が帰宅。
ギャングであった父への空想とのギャップ、それでも憧れの父と仲良くなろうと少年は背伸びをする。
この父はタイカが演じており、ガッツリメインキャラです。だいぶ癖強めです。
メルヘンが効いた空想のシーンと、家族の生々しい毒々しさが鑑賞後に絶妙な中毒加減をもたらしてくれます。つまり、映画好きな方に伝えるとするならばウェスアンダーソン感が強めです。
ダークユーモアな笑いと癒し、これぞタイカの原点的な名作です。
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