夢と現実の葛藤を描いた名曲「27才のリアル」シリーズ 

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「27才のリアル」 ESSAY
画像は狐火Twitterから

いつまでが若者なのだろうか、いつまで夢を追っかけていい年齢なのだろうか……。

27歳で他界した著名人や大物アーティストが多いことから呼ばれる「27クラブ」が存在するように、ミュージシャンなどで大物になってやろうという夢追い人にとっては27歳は極めて大きな境だ。

何故なら、一部の人にとっては、27歳までに売れなくては大物になれないと考えるある種のデッドラインであり、重い年齢だだからだ。

そんな明るくない27歳について本気で表現したのが、詩を朗読するようにラップするポエットリーリーディングラッパー・狐火の楽曲「27才のリアル」。

売れていない崖っぷちの状態、ラッパーとして売れるまで続けたい、夢を諦め真面目に働くべきか、そんな葛藤や心情を熱くラップしている。

この楽曲は、人生に迷っている人には特に深く刺さる名曲だ。本曲と、リスペクトを込めカバーをしたラッパーと各曲について紹介。

本家本元による、狐火「27才のリアル」

今でこそ、ヒップホップやラップというジャンルは日本で市民権を得てきた。だが、狐火がこの曲をYouTubeに上げたのは2010年9年3日のこと。

まだ、今ほどラッパーという人種が世間に浸透していなかったし、SNSで名を広め、稼ぐなどの手段もなかった。だからこそ、ラッパーで売れたい反面、いつ売れるのか、本当に売れるのかという葛藤も強かったはずだ。

また、”ラッパーはかっこつけてナンボだろ”というある種の風潮や固定概念が流れていた中で、売れないラッパーの現実・日常を表現した、身を引き裂くようなリアルなリリックは、ポエットリーリーディングラッパーならではだ。

リリックは、ラッパーだけでは生活が出来なく、仕方なく行う就職活動のもどかしさ、悔しさと将来への不安など、狐火の感情を織り込みつつも物語調で描いている。

そして、それでもやっぱりラップが好きだ続けたいという心の底からの本音が響いている。

勇気が欲しい 特に上司が活発で生意気な年下でも余裕で頭を下げられる勇気が欲しい/本当は1つの事を信じて続ける勇気を一番欲しい

狐火「27才のリアル」より一部引用

本曲はヒップホップ好きでない人でも、クスリと笑え、心がジーンとなる暖かい魅力がある。そして、感情を剥き出しにしたメッセージ性は、27歳を超えて30歳という節目が近い人には必ず響く。

特に、何かを頑張っている人、頑張りたいと思っているのに行動できていない人には。

狐火はその後「28才のリアル」をリリース。最新の「38才のリアル」まで、毎年ごとにその年齢のリアルを楽曲で披露している。

周囲に言える結果を求めた、空也MC「27才のリアル」

同じくポエットリィーラッパー・空也MCによるカバー曲「27才のリアル~空也MCのREMIX~」。

ビートは全体的に、より軽やかにリミックスされており、リリックのメッセージ性としてはラッパーとしての結果が欲しいと表現。

ラッパーとしての結果、彼にとっては友人や家族に胸が張れる程度でいいから、結果が欲しいということ。

空也MC、27歳。この曲はまだ名が売れていないラッパーの等身大の叫びであり、自分への誓いにも思える2013年にリリースされた楽曲だ。

特にリリックの就職や安定への不安の後に歌う「ラッパーの部屋にタウンワークは似合わねぇよ」は歴史に残るパンチラインに違いない。大金を稼いで名を世界に轟かすというわけではない、自分の音楽で普通の生活でいいから暮らしたい。

家族や友人に胸を張って音楽で生きていると言いたい、自分の音楽を続けたいし自信を持ちたい、そんな主張も感じられる。

狐火へのリスペクトを織り込みつつ、自分の日常や想いを赤裸々にラップしており、彼がカバーしたことで「27歳のリアル」はシーンでさらに名が広まるようになった。

”仕事が欲しい”、輪入道が見せた魅力的な弱さ「27才のリアル」

熱いバイブスと漢気満載な楽曲をリリースしているラッパー・バトルMCとしても知られる輪入道のカバー。

フリースタイルバトルの番組『フリースタイルダンジョン』の2代目に就任。シーンでもさらに名が売れ始めた2018年に発表した。

彼は”仕事が欲しい”という想いを込め、普段の男気あるカッコいいスタイルとは真逆にも思える、本音の弱音を吐いている。メディアにも出演し始め、名も売れ始めたのに仕事が欲しい? 正直、前半はそう思った。

途中「でも思うんだ いつまでこんな生活続けられるのかな」と不安を漏らす、そして「仕事が欲しい」という気持ちに熱が帯びていく叫び。

彼の包み隠さず、突き刺さるような真っ直ぐなリリックは、音楽で生きていく飯を食っていくという意思表明だ。頭を下げってもいい、弱く見られたっていい、自分はラッパーとして生きていく、だから仕事が欲しいという。

弱い部分を見せるというのは一見、カッコイイこととは真逆に思える。

しかし、普段から真っ直ぐに、熱く優しい漢・輪入道が歌ってみせた不安や葛藤は、彼のキャラクターや生き様を聴いてきた人間にとって、心掴まれる弱音に昇華される。

「仕事が欲しい」=ラッパーとして金を稼ぎたいに加え、一生ラッパーとして生きていくという気持ちが熱く伝わってくる。

楽曲内で、狐火、空也MCの名を挙げている部分にリスペクトが感じられ、輪入道も「27才のリアル」を聴いて力をもらってるんだ……とまたこの楽曲を好きになれる。

どこにでもいる中学生!? けーご「13才のリアル」 

彼らラッパーだけではない、「27才のリアル」に感銘して歌った人は。

いじめや私生活、人生に悩んでいた中学生・けーご。彼は等身大の自分について、熱くもリアルに「けーご – 13才のリアル 」を描いた。

ビートは「27才のリアル」ではなく、リリックにもサンプリングがなく「27才のリアル」のカバー曲ではない。しかし、「13才のリアル」というタイトル、弱い部分をさらけ出しネガティブをラップに昇華したリリック。この楽曲は、紛れもなく「27才のリアル」の系譜だ。

学校でいじめられていた少年は、ラップと出会い楽曲を発表。B-BOYPARKでもマイクを持ち、自信を持った彼は、学校の周囲の反応にも変化がという歌詞だ。

韻はほとんど踏んでいない、しかしながら、これこそHIPHOPだ。13才でラップを挑戦したこと、弱い部分をみせ等身大で語ること、全てが輝いている。

翌年には「14才のリアル」をリリース。ラッパーとして変わった環境と音楽制作への想いを表現している。

けーごだけじゃない、著者も何度もこの楽曲とカバーに勇気と力をもらった。今、この記事を書きながらも。

狐火が生み出した「27才のリアル」が伝えた、夢の葛藤と消えない灯火は、今も誰かに広がっている。

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